競馬は予想が的中した達成感が非常に魅力ですが、馬券を買う以上お金が関わってきます。お金が関わってくるとなれば、競馬の税金の仕組みがどうなっているのか気になるところ。
もし確定申告をする必要があるのに気づいていなかった場合、後に追徴課税の対象となることもあります。
この記事では以下のような疑問についてわかりやすく解説していきます。
- 競馬の払戻金には税金はかかる?
- 競馬で確定申告をする必要があるのはいくらから?
- 税金の計算方法は?
- 競馬の税金がおかしいと言われているのはなぜ?
競馬を楽しむ以上は必ず知っておきたい知識ですので、是非参考にしてみて下さい。
競馬の払戻金には税金はかかる?
競馬で得た利益は「一時所得」または「雑所得」に区分され、確定申告の対象となります。
個人が趣味として競馬を楽しんでいる場合は「一時所得」に、競馬を事業として行っている場合は「雑所得」に区分されます。
ただし競馬で利益を得たとしても必ず確定申告をしなければならないわけではありません。一時所得の金額によって申告の有無が変わってきます。
順番に解説していきます。
一時所得とは?
一時所得とは懸賞や福引きの賞金品などの臨時収入を指します。
競馬をはじめとするギャンブルの払戻金も原則として一時所得になります。
一時所得および課税所得(税金がかけられる所得)の計算式は以下になります。
一時所得 = 総収入 - その収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最大50万円)
課税所得 = 一時所得 × 1/2
なお競馬の場合、「その収入を得るために支出した金額」に当たり馬券を購入するためにかかった費用は含める事ができます。
ただし、一時所得ではハズレ馬券の費用は「その収入を得るために支出した金額」には含まれまないので注意が必要です。
競馬はいくらから確定申告の必要がある?
具体的に競馬でいくらの利益が出ると確定申告の必要があるのかは、フリーランス・個人事業主か、給与を受け取っている会社員かで変わってきます。
- フリーランスや個人事業主は総収入が50万円を超えた場合に確定申告が必要
- 会社員は総収入が90万円を超えた場合に確定申告が必要
フリーランス・個人事業主の場合
フリーランスや個人事業主の場合、競馬の得た利益が50万円を超えた場合は原則として確定申告の必要があります。
何故50万円かというと、一時所得は 「総収入 - 経費(その収入を得るために支出した金額 )− 特別控除額(最大50万円)」で計算できるので、特別控除額50万円を超えない場合の一時所得は0円となるためです。
会社員の場合
給与所得者の場合は、勤め先で年末調整をしてもらうため通常確定申告は必要ありません。
ただし、給与所得以外の所得(課税所得額)が年間で20万円を超えた場合確定申告の必要があります。
つまり、会社員の場合は競馬の得た利益が90万円を超えた場合は原則として確定申告の必要があるという事になります。
ネット投票をしている方は年間の払戻金を把握しやすいですね。
競馬にかかる税率の計算方法
では実際に競馬の払戻金から実際にどれくらいの税率がかかるのかざっくり計算してみましょう。
使用する計算式はこちらです。
一時所得 = 総収入 - その収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最大50万円)
課税所得 = 一時所得 × 1
【例】年間の払戻金200万円、当たり馬券の購入費用が10万円の場合
総収入200万円 - 経費10万円 - 特別控除額50万円 = 一時所得140万円
一時所得140万円× 1/2 = 70万円
つまりこの場合の課税所得額は70万円になります。
以下は所得税の速算表になります。こちらに照らし合わせてみます。
所得税の速算表
課税所得額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
※2037年までの確定申告では、上記に復興特別所得税(原則、基準所得税額の2.1%)が加算されます。
課税所得額は70万円なのでこの例では5%の税率がかかることになります。
ちなみに控除額は税率をかけてから差し引きます。「課税所得額 × 税率 - 控除額」という計算式です。
競馬の税金計算で注意すべき点
競馬の税金計算で特に注意すべき点を紹介します。競馬の税金問題でよく見かけるのは以下のような人です。
今年の馬券の年間収支はマイナスだったから、税金の申告は必要ないな…
これはよくある間違いです。一時所得は総収入から計算します。
つまり、年間収支はマイナスでも払戻金が確定申告の対象になる場合があります。
特に継続的に馬券を買っていて、賭ける金額の多い方は注意が必要です。ハズレ馬券は一時所得では経費に含まれないので、確定申告の対象になっている場合があります。
ネット投票のみで馬券を買っているなら年間の払戻金がわかりやすいですね。
競馬の税金はおかしい?競馬が抱える税金問題
競馬の払戻金が一時所得で申告の対象であることは、一般の人からすれば「あ~そうなんだ」と思うくらいでしょう。しかし競馬ファンの中では理不尽だという声も少なくありません。
これにはいくつか理由があります。
理由1 馬券は購入した時点で控除率25%が差し引かれている
理不尽だと言われる理由の1つは「控除率」です。
競馬の配当金は基本的に該当レースの総売り上げから控除率の25%を差し引いた金額です。この配当金が的中者で分配される仕組みです。
内訳は以下のようになります。
- 的中した人への払戻金 75%
- JRAの売り上げ 15%
- 国庫に納付 10%
控除率は馬券の種類によっても若干違います。単勝・複勝では20%、WIN5では30%と言った感じです。
15%のJRAの売り上げは競馬を運営するのに必要です。競馬ファンでここに不満を述べる人はあまりいないでしょう。
問題は残りの10%が国庫納付金として納められている点です。つまり馬券を購入した人は的中不的中に関係なく既に10%の税金を支払っているという事です。
このため払い戻しを一時所得とするなら「二重課税ではないのか?」という声があるというわけです。
理由2 一時所得だと外れ馬券が経費にならない
競馬の税金問題で必ず話題になるのが「一時所得の場合は外れ馬券が経費にならない」ということです。
過去には裁判で外れ馬券は必要経費と認められた例もあります。競馬の自動ソフトウェアを使って、年間ほぼ全てのレースの馬券を大量に購入して利益を上げていたため「営利目的の継続的行為」と認められたものです。
一般の競馬ファンが趣味で楽しむ範疇では一時所得として考える必要があります。
では具体的に1つのレースの的中例を参考にしてどれが経費にあたるかを考えてみましょう。
【例】
購入金額:10,000円
払戻金額:200,000円
投票内容
単勝:5000円
的中 馬連1頭軸3頭流し:各1000円 計3000円
3連複6頭BOX:各100円 計2000円
この例では20万円が的中したレースの馬券を1万円購入しています。
レースの購入金額の1万円でしょうか?それとも的中するために馬連に投じた合計金額3000円でしょうか?
答えは的中した馬連1点のみの1000円が経費になります。
これは経費が「その収入を得るために直接要した金額」だからです。残りの9000円は外れ馬券として経費にはなりません。
的中率を上げるために点数を多く買っても、それは「収入を得るために直接要した金額」とはいえないということですね。
熱心な競馬ファンからすると辛い税制
どうしても競馬ファンからするときついと感じる税制ですが、競馬で得た利益がまとめて一時所得として扱われる事が最大の原因かなと思います。
年に数回を競馬を買って楽しんで、高額配当をゲットして大幅なプラス!これはまさしく臨時収入と言えるので、一時所得として扱って税金が発生するのは自然です。
「臨時収入まで多くの税金をとるのはかわいそう」という事で50万円が特別控除として引かれるし、税率を計算する時に1/2されるなど配慮も十分されています。
一方で毎週熱心に競馬をやる人にとっての課税方法としては合っていない気もします。
競馬は馬券を買う時点で既に控除率25%が引かれているため、継続的に買う場合はごく一部の人を除いてほぼマイナス収支に収束していきます。
年間マイナス収支ではあるけれど払戻金額が一定額を超えたので税金がかかるというケースは厳しいものがあります。
またネット投票ではなく現地で馬券を買っている人にとっては、正確な払戻金を把握するのは非常に大変です。
現状の競馬の税制は複雑でもあるので、実情に合った改善案が見つかるといいですね。
まとめ
今回は競馬にかかる税金について紹介しました。今回のポイントとしては以下です。
- 競馬で得た利益は「一時所得」または「雑所得」に区分され、確定申告の対象となる
- フリーランスや個人事業主は総収入が50万円、会社員は90万円を超えた場合確定申告の必要がある
- 外れ馬券は基本的に経費にはならない
- 年間収支はマイナスでも年間の払戻金が多ければ確定申告の対象になる場合がある
競馬における税金は馬券を買う以上知っておかなければいけない知識です。
きちんと払戻金を把握して税金を納める必要があるのかないのかを確認しておきましょう。特に高額な払戻しを受けた時はキチンと納税するように心がけたいですね。