パリロンシャン競馬場はフランスのパリのブローニュの森の中にある世界で最も美しいと言われる競馬場です。
世界最高峰のレースの一つである「凱旋門賞」が行われる舞台として有名で、凱旋門賞制覇は日本競馬界の悲願ともされています。
特に雨が降った時のタフな馬場は日本とは全く異質のもので、日本馬が参戦する事そのものにも賛否両論が巻き起こるほどです。
ここでは凱旋門賞が行われるパリロンシャンの芝2400mのコースについて詳しく紹介していきます。
パリロンシャン芝2400mのコースの特徴
スタート地点は1~2コーナ―の中間にあるポケットから。
バックストレッチの最初の400mはほぼ平坦でここでまず熾烈なポジション争いが行われます。
その後の300mは高低差7mの上り坂(最大傾斜2.4%)が続き、更に3コーナの坂の頂点(1000m通過地点)までに3m上るため、その高低差は10mにも及びます。
この上り坂で動いてしまうと、最後の直線で力尽きてしまうと言われています。
日本で似ているコースとして「京都競馬場」が挙げられますが、その京都競馬場の坂の高低差は4.3mであることからもそのタフさがうかがえますよね。
3コーナー~フォルスストレート
3コーナーの坂の頂点(残り1400m地点)からは300m程下り坂(最大傾斜3%)が続きます。
3、4コーナー中間からパリロンシャン競馬場の名物であるフォルスストレート(偽りの直線)と呼ばれる250m程の直線が最後の直線前に待っています。
この下り坂からフォルスストレートを抜けるまでも動かしていってはいけないと言われています。更に直線に向けて外を回したくない各馬が密集するため、我慢強さが立ち回りの上手さが求められます。
実際に凱旋門賞のレースを動画で見てみると、確かにフォルスストレートはもう最後の直線なのかなと見間違えてしまいます。
最後の直線は東京並みの533m
いよいよ最後の直線。
パリロンシャン競馬場の直線は坂こそありませんが、東京競馬場のほぼ同じくらいの533mの直線が待っています。
タフな坂越え、スピードが出過ぎると最後に響く下り坂、そしてこの長い直線とパリロンシャン競馬場はまさに馬の総合力が求められる舞台です。
過去にエルコンドルパサーやオルフェーヴルが一度抜けだしてから、勝利目前で交わされています。
地盤は緩く、まとわりつくような芝が非常にタフ
パリロンシャン競馬場の芝は日本の芝より、芝丈が長いイメージがありますが実はそこまで差はありません。
「ペレニアル・ライグラス」という品種が主に使用されており、これは札幌や函館でも使用されている洋芝です。
そのかわりに地盤は緩く掘れやすく、芝はまとわりつきます。そのため脚が深く入り込むような状態になっています。
更に雨が降ろうものなら地面に水がたまり、進んでいくのも難しい馬場になります。
凱旋門賞の時期は天候も安定せず、道悪になることもしばしばあります。このような予想しにくい馬場状態も日本馬を苦戦させている要因の一つであると言えます。
一時期、札幌記念などの洋芝コースをステップとしたローテーションも試されましたが、未だ攻略には至っていません。
凱旋門賞の傾向・データ
以下は過去10年の凱旋門賞の1~3着馬です。(※ゲートは馬番ではなくゲート番号順です)
なお、過去10年間の内、2016~2017年は改修工事のためシャンティで行われているので、それを除いた8年間のデータで傾向を探っていきます。
年 | 着順 | ゲート | 馬名 | 性齢 | 通過順 |
パリロンシャン (重) | 20221着 | 6 | アルピニスタ | 牝5 | 5-4 |
2着 | 2 | ヴァデニ | 牡3 | 9-9 | |
3着 | 18 | トルカータータッソ | 牡5 | 15-10 | |
パリロンシャン (重) | 20211着 | 12 | トルカータータッソ | 牡4 | 5-6 |
2着 | 3 | タルナワ | 牝5 | 8-10 | |
3着 | 2 | ハリケーンレーン | 牡3 | 7-8 | |
パリロンシャン (不良) | 20201着 | 4 | ソットサス | 牡4 | 3-3 |
2着 | 1 | インスウープ | 牡3 | 4-6 | |
3着 | 7 | ペルシアンキング | 牡4 | 1-1 | |
パリロンシャン (重) | 20191着 | 3 | ヴァルトガイスト | 牡5 | 7-8 |
2着 | 9 | エネイブル | 牝5 | 4-3 | |
3着 | 1 | ソットサス | 牡3 | 5-5 | |
パリロンシャン (良) | 20181着 | 6 | エネイブル | 牝4 | 5-4 |
2着 | 15 | シーオブクラス | 牝3 | 19-19 | |
3着 | 9 | クロスオブスターズ | 牡5 | 10-11 | |
シャンティ (重) | 20171着 | 2 | エネイブル | 牝3 | 3-3 |
2着 | 3 | クロスオブスターズ | 牡4 | 10-10 | |
3着 | 1 | ユリシーズ | 牡4 | 5-5 | |
シャンティ (良) | 20161着 | 12 | ファウンド | 牝4 | 6-6 |
2着 | 11 | ハイランドリール | 牡4 | 4-4 | |
3着 | 16 | オーダーオブセントジョージ | 牡4 | 2-2 | |
パリロンシャン (良) | 20151着 | 14 | ゴールデンホーン | 牡3 | 2-2 |
2着 | 11 | フリントシャー | 牡5 | 3-3 | |
3着 | 5 | ニューベイ | 牡3 | 4-4 | |
パリロンシャン (良) | 20141着 | 3 | トレヴ | 牝4 | 6-6 |
2着 | 4 | フリントシャー | 牡4 | 7-7 | |
3着 | 15 | タグルーダ | 牝3 | 4-4 | |
パリロンシャン (重) | 20131着 | 15 | トレヴ | 牝3 | 14-3 |
2着 | 8 | オルフェーヴル | 牡5 | 11-7 | |
3着 | 9 | アンテロ | 牡3 | 3-3 |
凱旋門賞で有利な年齢・性別
年齢 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
3歳 | 2-3-5-45 | 3.64% | 9.09% | 18.18% |
4歳 | 4-1-1-31 | 11.11% | 13.89% | 16.67% |
5歳 | 2-4-2-19 | 7.41% | 22.22% | 29.63% |
6歳以上 | 0-0-0-12 | 0% | 0% | 0% |
凱旋門賞は3歳馬の斤量が軽いため有利のイメージがありますが、近年は4歳馬の活躍が目立ちます。
ただ3歳馬も出走頭数自体が多いため、誰かは馬券になるというパターンは見受けられます。
更に5歳も馬券に絡む可能性が高く、軽視してはいけない存在になります。
一方、6歳以上は全く馬券に絡んでいない点も見逃せません。中には凱旋門賞2勝2着2回の怪物エネイブルも6歳で果敢に挑戦しましたが6着となっています。
次に性別で比較してみましょう。
性別 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
牡馬 | 4-5-7-83 | 4.04% | 9.09% | 16.16% |
牝馬 | 4-3-1-24 | 12.05% | 21.88% | 25.00% |
8年間の勝利数自体は各4勝ずつで同じですが、牝馬は出走数自体が少ないのでそれを考えると、牝馬はかなり有利であることがわかります。
ただ、エネイブルやトレヴといった歴史的牝馬が複数年に渡って大活躍しているので、近年だけで見るとやや例外的な数値とも言えます。
凱旋門賞で有利な脚質・ポジション
過去8年の1~3着馬の脚質比較すると
- 逃げ(0-0-1)
- 先行(5-3-4)
- 差し(3-4-3)
- 追い込み(0-1-0)
となり、「先行」、「差し」が中心になります。
勝ちパターンとしては結構確立されていて、3番手~7番手あたりの内のポジションとって、直線まで我慢して内から抜けてくるのが王道となります。
特に改修工事が行われた2018以降は、オープンストレッチ(直線入口の内ラチ側にコース幅が6m分の進路)が追加されたため、内から抜けてくる馬が強いレースになります。
追い込みは当然外を回す確率が高くなるため、余程の実力や展開の助けがないと届かないケースがほとんどです。
逃げについては、コース自体がタフなのもありますが、欧州ではペースメーカー(同厩舎の有力馬を有利にするため前に行きペースをコントロールする馬)も出走するケースがあるのも理由の一つです。
2013年のトレヴは後方から外を捲っていっての圧勝というものすごい勝ち方!
凱旋門賞の枠順の有利不利
まずヨーロッパでは枠番ではなくゲート番号で、馬番とも別な事に注意しておきましょう。
さらに凱旋門賞はフルゲートになると20頭にもなり、馬群が密集するレース展開になりやすいのが特徴です。
過去8年で1~3着馬でゲート番号が半分より内か外かで比較してみると…
- 内寄りの枠【5-6-3】
- 外寄りの枠【3-2-5】
となり内が有利となります。馬群に閉じ込められやすいデメリットを差し引いても、できるだけロスのない内でレースを進めたいです。
2012年オルフェーヴルは大外18番の不利を覆してのクビ差の2着でした。
凱旋門賞の好走傾向まとめ
- 4歳馬と5歳馬が中心
- 牝馬の好走率が高い
- 内枠から上手く立ち回れる先行・差しが強い
2023年凱旋門賞日本馬挑戦のスルーセブンシーズはどうなる?
今年の凱旋門賞は日本から「スルーセブンシーズ」が挑戦します。1頭のみの参戦で少し寂しくはありますが期待度はどれくらいでしょうか。先程の凱旋門賞好走条件に当てはめてみると…
- 4歳馬と5歳馬が中心 → 5歳 クリア!
- 牝馬の好走率が高い → 牝馬 クリア!
- 内枠から上手く立ち回れる先行・差しが強い → 5番ゲート・差し
なんと3つ全ての条件をクリアしています。
宝塚記念でも不利がなければ、世界最強と言われているイクイノックスに勝っていたかもと思わせた内容で、好走の可能性は十分にありそうです。
馬場適性などクリアすべき問題はありますが、大いに期待できそうな1頭ですね。
後は応援あるのみ!頑張って欲しいです。
凱旋門賞歴代日本馬成績まとめ
以下は凱旋門賞に挑戦した歴代日本馬の成績になります。
ここ何年かは特に馬場に苦戦する傾向が強くなっています。
年 | ゲート | 馬名 | 着順 | 性齢 | 前走 |
パリロンシャン (重) | 202210 | タイトルホルダー | 11着 | 牡4 | 宝塚記念1着 |
20 | ステイフーリッシュ | 14着 | 牡7 | ドーヴィル大賞2着 | |
5 | ディープボンド | 18着 | 牡5 | 宝塚記念4着 | |
3 | ドウデュース | 19着 | 牡3 | 日本ダービー1着 | |
パリロンシャン (重) | 202114 | クロノジェネシス | 7着 | 牝5 | 宝塚記念1着 |
5 | ディープボンド | 14着 | 牡4 | フォワ賞1着 | |
パリロンシャン (不良) | 202012 | ディアドラ | 8着 | 牝6 | ナッソーS7着 |
パリロンシャン (重) | 2019年7 | キセキ | 7着 | 牡5 | フォワ賞3着 |
4 | ブラストワンピース | 11着 | 牡4 | 札幌記念1着 | |
2 | フィエールマン | 12着 | 牡4 | 札幌記念3着 | |
パリロンシャン (良) | 2018年1 | クリンチャー | 17着 | 牡4 | フォワ賞6着 |
シャンティ (重) | 2017年13 | サトノダイヤモンド | 16着 | 牡4 | フォワ賞4着 |
5 | サトノノブレス | 17着 | 牡7 | フォワ賞6着 | |
シャンティ (良) | 2016年14 | マカヒキ | 14着 | 牡3 | ニエル賞1着 |
パリロンシャン (良) | 2014年12 | ハープスター | 6着 | 牝3 | 札幌記念1着 |
14 | ジャスタウェイ | 8着 | 牡5 | 安田記念1着 | |
2 | ゴールドシップ | 14着 | 牡5 | 札幌記念2着 | |
パリロンシャン (重) | 2013年8 | オルフェーブル | 2着 | 牡5 | フォワ賞1着 |
11 | キズナ | 4着 | 牡3 | ニエル賞1着 | |
パリロンシャン (重) | 2012年18 | オルフェーブル | 2着 | 牡4 | フォワ賞1着 |
8 | アヴェンティーノ | 17着 | 牡8 | フォワ賞5着 | |
パリロンシャン (重) | 2011年1 | ヒルノダムール | 10着 | 牡4 | フォワ賞2着 |
16 | ナカヤマフェスタ | 11着 | 牡5 | フォワ賞4着 | |
パリロンシャン (重) | 2010年10 | ナカヤマフェスタ | 2着 | 牡4 | フォワ賞2着 |
5 | ヴィクトワールピサ | 7着 | 牡3 | ニエル賞4着 | |
パリロンシャン (稍重) | 2008年4 | メイショウサムソン | 10着 | 牡5 | 宝塚記念2着 |
パリロンシャン (良) | 2006年2 | ディープインパクト | (3着入線) | 失格牡4 | 宝塚記念1着 |
パリロンシャン (良) | 2004年18 | タップダンスシチー | 17着 | 牡7 | 宝塚記念1着 |
パリロンシャン (良) | 2002年12 | マンハッタンカフェ | 13着 | 牡4 | 天皇賞春1着 |
パリロンシャン (不良) | 1999年1 | エルコンドルパサー | 2着 | 牡4 | フォワ賞1着 |
パリロンシャン (良) | 1986年8 | シリウスシンボリ | 14着 | 牡4 | フォワ賞2着 |
パリロンシャン (良) | 1972年メジロムサシ | 18着 | 牡5 | オープン1着 | |
パリロンシャン (良) | 1969年スピードシンボリ | 着外 | 牡6 | ドーヴィル大賞典10着 |