愛チャンピオンSはアイルランドのG1競走で、欧州中距離カテゴリの最高峰とも言えるレースです。
今年は日本からシンエンペラーが参戦予定で、9月の愛チャンピオンSから最大目標となる10月の凱旋門賞へと向かう遠征プランが発表されました。
ここでは愛チャンピオンSが行われるレパーズタウン競馬場のコースの特徴や傾向を中心に詳しく解説していきます。
愛チャンピオンSは欧州強豪馬が集結する中距離王者決定戦
レース名 | アイリッシュチャンピオンステークス |
競馬場 | レパーズタウン競馬場 |
格付け | G1 |
距離 | 芝2000m(10ハロン) |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 定量 ・3歳(57.5kg) ・4歳(60.5kg) ・牝馬は1.5kg減 |
開催日 | 9月中旬(2024年は9/14(土)) |
賞金総額 | 125万ユーロ |
愛チャンピオンSはアイルランドのレパーズタウン競馬場で行われる芝2000mのG1です。
1976年の創設から1983年までは「ジョーマクグラスメモリアルステークス」、1984年~1990年までは「フェニックスチャンピオンステークス」という競走名でフィーニクスパークで開催されていましたが、1991年から開催地をレパーズタウン競馬場へと移し「アイリッシュチャンピオンステークス」に改称して現在に至ります。
IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表している2023年のレースランキングでは、中距離のカテゴリで「天皇賞秋」と並んでトップにランキングしている芝中距離の世界最高峰のレースの1つ。
欧州強豪馬が集結する中距離王者決定戦となっています。
「アイリッシュチャンピオンズフェスティバル」の目玉となるレース
「アイリッシュチャンピオンズフェスティバル」は毎年9月の第2土・日曜日にレパーズタウン競馬場とカラ競馬場で開催される10個の重賞競走の総称です。
愛チャンピオンSはこのアイリッシュチャンピオンズフェスティバル1日目の目玉レースになります。
アイリッシュチャンピオンズフェスティバル 1日目の重賞競走
レース | 年齢 | 距離 |
キルターナンS(G3) | 3歳以上 | 2400m |
チャンピオンズジュベナイルS(G2) | 2歳 | 1600m |
ソロナウェイS(G2) | 3歳以上 | 1600m |
メイトロンS(G1) | 3歳以上牝 | 1600m |
愛チャンピオンS(G1) | 3歳以上 | 2000m |
アイリッシュチャンピオンズフェスティバル 2日目の重賞競走
レース | 年齢 | 距離 |
ブランドフォードS(G2) | 3歳以上牝 | 2000m |
フライングファイブS(G1) | 3歳以上牝 | 2400m |
モイグレアスタッドS(G1) | 2歳牝馬 | 1400m |
ヴィンセントオブライエンS(G1) | 2歳牡・牝 | 1200m |
アイリッシュセントレジャー(G1) | 3歳以上 | 2800m |
2日間でこれだけの重賞競走が見れるのはかなり豪華ですね。
過去10年の勝ち馬
以下は英インターナショナルS過去10年の勝ち馬です。
年 | 調教国 | 勝ち馬 | 性齢 | タイム |
2014 | イギリス | ザグレイギャッツビー | 牡3 | 2:03.18 |
2015 | イギリス | ゴールデンホーン | 牡3 | 2:05.41 |
2016 | フランス | アルマンゾール | 牡3 | 2:08.93 |
2017 | イギリス | デコレーテッドナイト | 牡5 | 2:08.36 |
2018 | イギリス | ロアリングライオン | 牡3 | 2:07.21 |
2019 | アイルランド | マジカル | 牝4 | 2:06.49 |
2020 | アイルランド | マジカル | 牝5 | 2:05.08 |
2021 | アイルランド | セントマークスバシリカ | 牡3 | 2:11.19 |
2022 | アイルランド | ルクセンブルグ | 牡3 | 2:12.10 |
2023 | アイルランド | オーギュストロダン | 牡3 | 2:02.68 |
更に過去に遡ると、JCを含め5か国のG1競走を制したピルサドスキー(1997)や、エリザベス女王杯を連覇を含むG1競走6勝のスノーフェアリー(2012)といった日本でも馴染みの深い名馬もこのレースを勝利しています。
日本馬の成績
年 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 着順 | 1着馬 |
2019 | ディアドラ | 牝5 | O.マーフィー | 4着 | マジカル |
日本馬の挑戦はディアドラの1回のみ
英国を拠点に長期にわたって海外を戦った馬で、ナッソーSで日本調教馬として2頭目の英国G1制覇を成し遂げた名馬です。
レパーズタウン競馬場の特徴
レパーズタウン競馬場は左回りのコースで、1周距離は約2800mとかなり大きめ。コースは平地競走と障害競走で併用されているため幅も広くスケールの大きい競馬場になっています。
東京競馬場の芝1周距離が2083.1mですから、1.3倍ほどの大きさという事になります。
2コーナー途中からのスタートで序盤は下り坂
愛チャンピオンSは2000mのレース。スタート位置はやや特殊で、向こう正面に差し掛かる2コーナーからのスタート。
コーナー途中のスタートなので枠順の有利不利が気になるところだが、小頭数でのレースが多く、そこまでの影響はない。ただ外枠の馬は内に切れ込んでくるので、前に行きたい内枠の馬はしっかりスタートを決めたいところ。
前半走ることになる向正面の直線距離は約800mとかなり長めで、向こう正面中程までは緩い下り坂になっています。
向こう正面半ばから延々続く上り坂がかなりタフなコース
3、4コーナーはコーナー半径も大きくかなりゆったりとした造りになっています。直線は約400mで、この大きさのコースとしてはそれほど長くはありません。
レパーズタウン競馬場の最大の特徴は、向こう正面途中辺りから続く上り坂です。この上り坂は直線で更に傾斜がきつくなりゴールするまでずっと続きます。
芝2000mの勾配をまとめると以下のようになります。
- 向こう正面半ばまで続く下り坂(高低差約6m)
- 向こう正面半ばから3角半ばまでの上り坂(高低差約5m)
- 400mの直線は更にキツイ上り坂(高低差約8m)
坂はだらだらと続くため勾配率はそれほど高くはないですが、高低差はコースを通して13m程あります。日本で最も高低差のあるコースが中山の5.3mですから、日本馬にとっては未知の領域になります。
このため中距離に必要なスピードの持続力だけでなく、パワーやスタミナも求められるタフなコースです。
時計の掛かる馬場でペースによって走破タイムにはバラつきがある
ヨーロッパの競馬場ではいわゆる「洋芝」が使われており、時計の掛かりやすい馬場になっています。
愛チャンピオンSのレコードタイムは2012年スノーフェアリーの2:00.92です。
走破タイムについてはかなりバラつきがあり、2021年セントマークスバシリカの勝ちタイムは良馬場でも2:11.19というものでした。この時は4頭立てということもあり、かなりのスローペースだったことが推察されます。
過去10年では7~8頭でのレースが多かったです。今年の出走頭数にも注目ですね!
2024年愛チャンピオンSの主な出走予定馬
ここでは2024年に愛チャンピオンSに出走予定の有力馬を紹介します。
シンエンペラー
牡3 6戦2勝【2-2-1-1】
矢作芳人厩舎 坂井瑠星騎手
主な戦績:23年京都2歳S(G1)1着 23年ホープフルS(G1)2着 23年日本ダービー(G1)3着
日本からの参戦は日本ダービー3着など今年のクラシック戦線を沸かせたシンエンペラー。全兄は凱旋門賞馬ソットサスという世界的良血馬で早くから海外遠征を視野に入れてきた馬。
「9月愛チャンピオンS→10月凱旋門賞」というローテは欧州でも多くの凱旋門賞馬を輩出してきた王道ローテ。フランスに滞在しての調整で日本馬にとっては新しい試みになる。
また、「矢作芳人調教師×坂井瑠星騎手×藤田晋オーナー」はケンタッキーダービーで大接戦の3着を演じたフォーエバーヤングと全く同じ。海外遠征のノウハウも十分で大きな期待がかかる。
エコノミクス
牡3 4戦3勝【3-0-0-1】
W.ハガス厩舎 T.マーカンド騎手
主な戦績:24年ダンテS(G2)1着 24年ギヨームドルナノ賞(G2)1着
本命視されているのはイギリスのエコノミクス。初戦こそ1400mという距離もあってか4着に敗れたが、今年4月に初勝利を挙げるとその後は負け知らず。
圧巻だったのは前々走のダンテS(G2)。後方からレースを進め、いざ追い出されると他馬とは次元の違う伸び脚を見せ6馬身差の勝利。
特筆すべきはここを最大目標にしてきた臨戦過程。英インターナショナルステークス(G1)より1週間早いギヨームドルナノ賞(G2)を選択し2馬身差の勝利。間隔に余裕を持たせて万全の状態でここに挑む。
オーギュストロダン
牡4 14戦8勝【8-2-0-4】
A.オブライエン厩舎 R.ムーア騎手
主な戦績:24年プリンスオブウェールズS(G1)1着 23年BCターフ(G1)1着 23年愛チャンピオンS(G1)1着 23年愛ダービー(G1)1着 23年英ダービー(G1)1着 22年フューチュリティT(G1)1着
父がディープインパクトという事で、日本でも抜群の知名度を誇るのはアイルランドのオーギュストロダン。
名門A.オブライエン厩舎においてシティオブトロイと並んでエース級の活躍を見せており、4歳ながら既にG1競走を6勝もしている名馬中の名馬。
英ダービーを始め愛ダービーやプリンスオブウェールズSなど勝利しているG1の格も軒並み高い。また去年もこの愛チャンピオンSも制覇しているように、今回のメンバーの中では実績は頭1つ抜けている存在です。
名手R.ムーアにも「これまでに騎乗してきた馬の中でもベスト」と言わしめる実力の持ち主で、着差をつけて勝つタイプではないが、抜け出した後もしぶとく脚を使える総合力の高い馬。
一方でキングジョージやドバイシーマクラシックなどでも見せたように、走らない時はからっきしダメで見極めの難しいタイプ。
極端な重馬場などになると割引が必要かも。
ロスアンゼルス
牡3 6戦5勝【5-0-1-0】
A.オブライエン厩舎
主な戦績:24年愛ダービー(G1)1着 23年クリテリウムドサンクルー(G1)1着 24年グレートヴォルティジュールステークス(G2)1着 24年英ダービー(G1)3着
有力馬を多数管理するA.オブライエン厩舎からはオーギュストロダンだけではなく、3歳ロスアンゼルスもスタンバイ。
英ダービー(G1)ではシティオブトロイとアンビエントフレンドリーに離されての3着だったが、その後シティオブトロイは英インターナショナル(G1)を圧倒的なレコードで勝利したように少々相手が悪かった。
その後、愛ダービーではアンビエントフレンドリーにはリベンジを果たしG1競走2勝目。前走グレートヴォルティジュールステークス(G2)は5頭立てだったが、後続を封じて貫禄の勝利。。
接戦での勝利が多いため派手さはないが、6戦5勝の戦績が示すとおり安定感は抜群。成長見込める3歳馬ということもあり、ここも当然有力馬の1頭。
ルクセンブルグ
牡5 17戦7勝【7-3-1-6】
A.オブライエン厩舎
主な戦績:24年コロネーションC(G1)1着 23年タタソールズゴールドカップ(G1)1着 22年愛チャンピオンS(G1)1着 21年フューチュリティT(G1)1着
ルクセンブルグは一昨年の愛チャンピオンSの覇者。昨年の香港カップではロマンチックウォリアーとヒシイグアスと壮絶な叩き合いを演じて2着に入線しており、日本人にも印象に残っている人は多いだろう。
A.オブライエン厩舎はオーギュストロダン、ロスアンゼルス、ルクセンブルグと3頭もの有力馬を出走させることになる。(出否は未定だがこの他にも登録馬が数頭いる)
ちなみにA.オブライエン調教師は愛チャンピオンSをレース史上最多の12勝をあげており、現在5連覇中。言うなればこの舞台は庭のようなもの。
ルクセンブルグ自体も毎年のようにG1を勝利しており、このレースは22年1着、23年2着と好相性。活躍の場を選ばないタイプで当然警戒すべき1頭になる。
まとめ
今回は愛チャンピオンSが開催されるレパーズタウン競馬場のコースの特徴や傾向について紹介しました。
8月には英インターナショナルSに5年ぶりにドゥレッツァが参戦し、今回の愛チャンピオンSにも5年ぶりにシンエンペラーが参戦予定と、近年あまり見られなかった欧州中距離G1がレースの選択肢の1つとしてとられるようになってきました。
1つのレースに日本の強豪が集結するのももちろん面白いのですが、世界を視野に入れて活躍の場を模索していく今の流れも非常にいいことだと思います。
特に今回の「愛チャンピオンS」→「凱旋門賞」のローテが日本馬にとっても有効なのか大きな注目ポイントになりそうです。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
2024年愛チャンピオンSは9/14(土)深夜に行われます。
今から楽しみですね