競馬予想をする上で避けて通れないのが雨による馬場状態の変化。
湿った馬場を得意とする馬、苦手とする馬などタイプが分かれるため非常に重要な要素となります。
単純な重馬場はまだしも「前日かなり雨が降って当日乾きつつある」、「開幕週の綺麗な馬場に雨が降ったりする」など微妙な状態でどう判断していいのかわからないということもよくあります。

今回は雨が「芝」レースに与える影響や馬場状態の判断方法、重馬場で有利になる血統などを紹介していきます。
雨が芝レースに与える影響は?


雨が降ると路盤が柔らかくなりクッション性が低くなります。さらに芝の表面は濡れて滑りやすくなります。
このためパワーが必要になり通常よりタイムがかかるようになります。
なお各馬場状態の判断基準は以下のように区分されています。
芝 | ||
良 | 踏みしめた際、馬場の表面はほとんど変化しない状態 | |
稍重 | 踏みしめた際に水は染み出ないが、馬場の表面がやや凹む状態。 | |
重 | 表面に水は浮いていないが、踏みしめると水が染み出る状態 | |
不良 | 表面や足跡に水が浮いている状態 |


ちなみに競馬の8割以上は良馬場で開催されています。
なおダートの場合はどうなるかはこちらの記事で詳しく紹介しているので興味のある方は参考にしてみて下さい。


馬場コンディションを知るもう1つの指標「含水率」とは?
良や重といった馬場状態意外に、雨の時に馬場コンディションを知る方法に「含水率」があります。
含水率は馬場の地面に含まれる水分の割合を示す数値です。
芝コースでは路盤砂、ダートコースではクッション砂の水分量を測定し百分率(%)で表されます。例えば芝コースの含水率が10%なら100グラムの路盤砂に15グラムの水分が含まれていることになります。
含水率の活用方法
含水率はJRAのホームページの「競馬メニュー」→「馬場情報」から確認する事ができます。
含水率は「競馬開催の前日金曜日のお昼頃」、「開催日当日の土日9時20分頃」に早朝に計測したものが発表されます。


含水率はゴール前(G)と4コーナー(4)の2箇所。それぞれ内側から1mあたりで計測されます。ただ含水率〇〇%と言われてもあまりイメージしにくいと思うので、すぐ下の「含水率表」を見ると今の馬場状態がイメージしやすくなります。


「含水率表」のグラフを見て「G」「4」が測定時刻の馬場状態のどのあたりに位置しているのがわかります。
これにより同じ良馬場でもパンパンの良馬場なのか、それとも稍重寄りなのかといった判断に利用することができます。
また、グラフの範囲は過去の記録を参考に馬場状態区分と含水率のおおよその目安を示したものです。
ですので上図の東京競馬場の例では含水率18%~19%は「良」「稍重」「重」の3つが被っていたりもします。馬場状態区分は含水率だけでなくを総合的に判断して決定するため、グラフから「G」「4」が外れる場合もあります。
注意点1:含水率と馬場状態区分の関係性は競馬場によって違う
含水率を芝コースで参考にする際注意したいのが、「含水率と馬場状態の関係性は競馬場によって違う」という事です。これは競馬場によって使用している路盤の材料が違うためです。
路盤の材料 | 良 | 稍重 | 重 | 不良 | |
東京競馬場 | 山砂(千葉県君津産)、 バーク堆肥 | 19以下 | 17~21 | 18~23 | 20以上 |
小倉競馬場 | 混合砂(海砂+山)、 ピートモス | 10以下 | 8~12 | 10~14 | 12以上 |
例えば東京競馬場の芝コースでは含水率19%以下は良馬場に含まれることがありますが、小倉競馬場では含水率10%以下となっています。
このため含水率の数値だけ見て判断するのは危険で、含水率表を見ながら同じ競馬場の比較で見る必要があります。



数値だけで判断せずに「含水率表」をよくチェックしましょう。
注意点2:含水率発表は早朝の一回のみ
含水率は開催日は早朝5時半頃に測定したものが午前9時20分頃に発表されますが、この一回のみになります。
当日雨が降り続けているなど時間経過で含水率も変化していきます。メインレースの頃には思っていた馬場と違うという事はよくあるので注意が必要です。
またJRAのホームページの馬場情報では含水率の他に「クッション値」も発表しています。「クッション値」は馬場のクッション性(反発力)を数値として表したものです。
こちらも馬場状態を知る一つの指標なので興味のある方は以下の記事も参考にして下さい。


重馬場・道悪の芝が得意な血統


芝コースは雨で重や不良になるとパワーがより必要になりますが、道悪馬場で成績が向上している馬を探っていきたいと思います。
過去10年の芝勝利数トップ10種牡馬の「重/不良」の成績は?
まずは過去10年(2015~2024年)の芝勝利数トップ10種牡馬の「重/不良」の芝成績を見ていきましょう。
順位 | 勝利数種牡馬 | 重/不良(良) |
1 | ディープインパクト | 勝率:11.7%(12.7%) 連対率:21.1%(23.9%) 3着内率:30.3%(33.9%) |
2 | ハーツクライ | 勝率:8.6%(8.6%) 連対率:15.5%(17.6%) 3着内率:23.8%(26.4%) |
3 | ロードカナロア | 勝率:8.9%(11.4%) 連対率:17.6%(21.3%) 3着内率:23.7%(29.1%) |
4 | ハービンジャー | 勝率:8.1%(8.0%) 連対率:14.1%(15.5%) 3着内率:23.5%(24.7%) |
5 | ダイワメジャー | 勝率:10.3%(8.3%) 連対率:18.4%(17.0%) 3着内率:27.4%(25.7%) |
6 | キングカメハメハ | 勝率:8.2%(10.1%) 連対率:19.2%(19.4%) 3着内率:27.6%(27.5%) |
7 | ステイゴールド | 勝率:5.9%(9.1%) 連対率:16.8%(17.4%) 3着内率:23.0%(26.0%) |
8 | ルーラーシップ | 勝率:7.8%(8.5%) 連対率:16.1%(17.0%) 3着内率:25.8%(26.0%) |
9 | キズナ | 勝率:13.2%(10.7%) 連対率:20.3%(20.2%) 3着内率:28.9%(29.3%) |
10 | エピファネイア | 勝率:5.7%(9.7%) 連対率:15.1%(19.4%) 3着内率:21.0%(28.1%) |
芝の勝利数トップ10種牡馬の中で重/不良の芝で好走率が上がっているのは、ダイワメジャー、キズナです。
特にダイワメジャーは勝率、連対率、3着内率全てが上昇しており「重/不良の芝」に強い種牡馬。キズナは3着内率こそ僅かに下がっているものの、勝率は良馬場時より2.5%アップの13.2%と大きく上昇しており道悪馬場は得意と言っていいでしょう。



全体的に好走率を下げる種牡馬が目立ちます。
良馬場とは求められる能力も変わってくるので、ある意味当然と言えるのかもしれませんね。
芝「重/不良」で「勝率・連対率・3着内率」全てが上昇している種牡馬
次に勝利数トップ10に限らず「重/不良」の芝で「勝率、連対率、3着内率」の全てが上昇している種牡馬をいくつかピックアップして紹介します。
種牡馬 | 重/不良(良) |
オルフェーヴル | 勝率:9.2%(7.8%) 連対率:21.2%(15.1%) 3着内率:28.8%(23.3%) |
アドマイヤムーン | 勝率:8.2%(7.0%) 連対率:16.4%(13.6%) 3着内率:22.8%(19.9%) |
スクリーンヒーロー | 勝率:10.6%(7.2%) 連対率:19.6%(15.1%) 3着内率:27.2%(22.9%) |
ブラックタイド | 勝率:6.4%(5.1%) 連対率:11.8%(10.7%) 3着内率:18.2%(17.5%) |
キタサンブラック | 勝率:13.2%(11.4%) 連対率:22.0%(21.5%) 3着内率:34.1%(29.5%) |
エイシンフラッシュ | 勝率:8.0%(5.1%) 連対率:14.2%(9.8%) 3着内率:19.8%(14.8%) |
リオンディーズ | 勝率:8.3%(7.7%) 連対率:14.0%(16.2%) 3着内率:26.4%(23.8%) |
オルフェーヴルは不良馬場のダービーや重馬場の凱旋門賞などを好走しており、産駒にもその特徴が受け継がれている可能性が高そうです。
同様にキタサンブラックも不良馬場の天皇賞秋で勝利しており、産駒が重や不良の芝が得意というのも頷けます。



ただ必ずしも現役時代、重馬場が得意だった馬の産駒が重馬場が得意とも限らないので注意が必要です。
近年芝で活躍中の種牡馬の「重/不良」の成績は?
先程は過去10年での活躍馬に焦点を当てましたが、近年芝で活躍中の種牡馬の「重/不良」成績も気になるところ。
最後は近年の芝で活躍中の種牡馬の「重/不良」の成績を紹介します。
勝利数順位 | 2024年種牡馬 | 重/不良(良) |
1 | キズナ | 勝率:13.2%(10.7%) 連対率:20.3%(20.2%) 3着内率:28.9%(29.3%) |
2 | ロードカナロア | 勝率:8.9%(11.4%) 連対率:17.6%(21.3%) 3着内率:23.7%(29.1%) |
3 | エピファネイア | 勝率:5.7%(9.7%) 連対率:15.1%(19.4%) 3着内率:21.0%(28.1%) |
4 | モーリス | 勝率:9.7%(11.3%) 連対率:18.1%(19.3%) 3着内率:26.9%(27.6%) |
5 | ドゥラメンテ | 勝率:8.8%(10.5%) 連対率:20.7%(20.3%) 3着内率:30.0%(29.5%) |
6 | キタサンブラック | 勝率:13.2%(11.4%) 連対率:22.0%(21.5%) 3着内率:34.1%(29.5%) |
7 | リアルスティール | 勝率:11.9%(12.8%) 連対率:22.4%(22.0%) 3着内率:32.8%(31.5%) |
8 | ハービンジャー | 勝率:8.1%(8.0%) 連対率:14.1%(15.5%) 3着内率:23.5%(24.7%) |
9 | ゴールドシップ | 勝率:6.5%(6.5%) 連対率:15.8%(14.5%) 3着内率:25.1%(22.6%) |
10 | ルーラーシップ | 勝率:7.8%(8.5%) 連対率:16.1%(17.0%) 3着内率:25.8%(26.0%) |
ゴールドシップは勝率こそ上がってはいませんが下がってもおらず、連対率や3着内率を上げている事から、重・不良は十分にこなせるとみていいでしょう。
サートゥルナーリアやスワーヴリチャードなど比較的新しい種牡馬はまだまだデータに乏しいので、今後のレースを重ねて徐々に判明してくるかと思います。



エピファネイア産駒は雨の宝塚記念を勝利したブローザホーンの印象が強いですが、全体で見ると重馬場で成績を下げています。
注意したい点ですね。