愛チャンピオンSはアイルランドのG1競走で、欧州中距離カテゴリの最高峰とも言えるレースです。
2024年に続き2025年も日本からシンエンペラーが参戦予定で、9月の愛チャンピオンSから最大目標となる10月の凱旋門賞へと向かう遠征プランが発表されました。

ここでは愛チャンピオンSが行われるレパーズタウン競馬場のコースの特徴や傾向を中心に詳しく解説していきます。
愛チャンピオンSは欧州強豪馬が集結する「中距離王者決定戦」


レース名 | アイリッシュチャンピオンステークス (Irish Champion Stakes) |
競馬場 | レパーズタウン競馬場 |
格付け | G1 |
距離 | 芝2000m(10ハロン) |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 定量 ・3歳(57.5kg) ・4歳(60.5kg) ・牝馬は1.5kg減 |
開催日 | 9月中旬(2025年は日本時間:9/13<土> 25時30分) |
賞金総額 | 125万ユーロ |
愛チャンピオンSはアイルランドのレパーズタウン競馬場で行われる芝2000mのG1です。
1976年の創設から1983年までは「ジョーマクグラスメモリアルステークス」、1984年~1990年までは「フェニックスチャンピオンステークス」という競走名でフィーニクスパークで開催されていましたが、1991年から開催地をレパーズタウン競馬場へと移し「アイリッシュチャンピオンステークス」に改称して現在に至ります。
IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表している2023年のレースランキングでは、中距離のカテゴリで「天皇賞秋」と並んでトップにランキングしている芝中距離の世界最高峰のレースの1つ。
欧州強豪馬が集結する中距離王者決定戦となっています。
「アイリッシュチャンピオンズフェスティバル」の目玉となるレース


「アイリッシュチャンピオンズフェスティバル」は毎年9月の第2土・日曜日にレパーズタウン競馬場とカラ競馬場で開催される10個の重賞競走の総称です。
愛チャンピオンSはこのアイリッシュチャンピオンズフェスティバル1日目の目玉レースになります。
アイリッシュチャンピオンズフェスティバル 1日目の重賞競走
レース | 年齢 | 距離 |
キルターナンS(G3) | 3歳以上 | 2400m |
チャンピオンズジュベナイルS(G2) | 2歳 | 1600m |
ソロナウェイS(G2) | 3歳以上 | 1600m |
メイトロンS(G1) | 3歳以上牝 | 1600m |
愛チャンピオンS(G1) | 3歳以上 | 2000m |
アイリッシュチャンピオンズフェスティバル 2日目の重賞競走
レース | 年齢 | 距離 |
ブランドフォードS(G2) | 3歳以上牝 | 2000m |
フライングファイブS(G1) | 3歳以上牝 | 2400m |
モイグレアスタッドS(G1) | 2歳牝馬 | 1400m |
ヴィンセントオブライエンS(G1) | 2歳牡・牝 | 1200m |
アイリッシュセントレジャー(G1) | 3歳以上 | 2800m |



2日間でこれだけの重賞競走が見れるのはかなり豪華ですね。
過去10年の勝ち馬
以下は愛チャンピオンS過去10年の勝ち馬です。
年 | 調教国 | 勝ち馬 | 性齢 | タイム |
2015 | イギリス | ゴールデンホーン | 牡3 | 2:05.41 |
2016 | フランス | アルマンゾール | 牡3 | 2:08.93 |
2017 | イギリス | デコレーテッドナイト | 牡5 | 2:08.36 |
2018 | イギリス | ロアリングライオン | 牡3 | 2:07.21 |
2019 | アイルランド | マジカル | 牝4 | 2:06.49 |
2020 | アイルランド | マジカル | 牝5 | 2:05.08 |
2021 | アイルランド | セントマークスバシリカ | 牡3 | 2:11.19 |
2022 | アイルランド | ルクセンブルグ | 牡3 | 2:12.10 |
2023 | アイルランド | オーギュストロダン | 牡3 | 2:02.68 |
2024 | イギリス | エコノミクス | 牡3 | 2:03:20 |



更に過去に遡ると、JCを含め5か国のG1競走を制したピルサドスキー(1997)や、エリザベス女王杯を連覇を含むG1競走6勝のスノーフェアリー(2012)といった日本でも馴染みの深い名馬もこのレースを勝利しています。
日本馬の成績
年 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 着順 | 1着馬 |
2024 | シンエンペラー | 牡4 | 坂井瑠星 | 3着 | エコノミクス |
2019 | ディアドラ | 牝5 | O.マーフィー | 4着 | マジカル |



日本馬初の挑戦はディアドラ。
英国を拠点に長期にわたって海外を戦った馬で、ナッソーSで日本調教馬として2頭目の英国G1制覇を成し遂げた名馬です。
レパーズタウン競馬場の特徴


レパーズタウン競馬場は左回りのコースで、1周距離は約2800mとかなり大きめ。コースは平地競走と障害競走で併用されているため幅も広くスケールの大きい競馬場になっています。
東京競馬場の芝1周距離が2083.1mですから、1.3倍ほどの大きさという事になります。
2コーナー途中からのスタートで序盤は下り坂
愛チャンピオンSは2000mのレース。スタート位置はやや特殊で、向こう正面に差し掛かる2コーナーからのスタート。
コーナー途中のスタートなので枠順の有利不利が気になるところだが、小頭数でのレースが多く、そこまでの影響はない。ただ外枠の馬は内に切れ込んでくるので、前に行きたい内枠の馬はしっかりスタートを決めたいところ。
前半走ることになる向正面の直線距離は約800mとかなり長めで、向こう正面中程までは緩い下り坂になっています。
レースの大半を占める上り坂がかなりタフなコース
3、4コーナーはコーナー半径も大きくかなりゆったりとした造りになっています。直線は約400mで、この大きさのコースとしてはそれほど長くはありません。
レパーズタウン競馬場の最大の特徴は、レースの大半を占める上り坂です。特に直線はゴールまで延々と続く上り坂となっています。
芝2000mの勾配を大まかにまとめると以下のようになります。
- 向こう正面半ばまで続く下り坂(高低差約6m)
- 向こう正面半ばから3角半ばまでの上り坂(高低差約5m)
- 4コーナーで一度下り坂を挟む
- 400mの直線は更にキツイ上り坂(高低差約8m)
坂はだらだらと続くため勾配率はそれほど高くはないですが、高低差はコースを通して13m程あります。日本で最も高低差のあるコースが中山の5.3mですから、日本馬にとっては未知の領域になります。
このため中距離に必要なスピードの持続力だけでなく、パワーやスタミナも求められるタフなコースです。
時計の掛かる馬場でペースによって走破タイムにはバラつきがある
ヨーロッパの競馬場ではいわゆる「洋芝」が使われており、時計の掛かりやすい馬場になっています。
愛チャンピオンSのレコードタイムは2012年スノーフェアリーの2:00.92です。
走破タイムについてはかなりバラつきがあり、2021年セントマークスバシリカの勝ちタイムは良馬場でも2:11.19というものでした。この時は4頭立てということもあり、かなりのスローペースだったことが推察されます。



過去10年では7~8頭でのレースが多かったです。今年の出走頭数にも注目ですね!
2025年愛チャンピオンSの主な出走予定馬


ここでは2025年に愛チャンピオンSに出走予定の有力馬を紹介します。
シンエンペラー・・・昨年3着の好相性レースで


牡4 11戦3勝【3-3-2-3】
矢作芳人厩舎 坂井瑠星騎手
主な戦績
23年:京都2歳S(G3)1着
23年:ホープフルS(G1)2着
24年:日本ダービー(G1)3着
24年:愛チャンピオンS(G1)3着
24年:ジャパンC(G1)2着
25年:ネオムターフ(G2)1着
日本からの参戦は去年3着から引き続いて2年連続の参戦となるシンエンペラー。全兄は凱旋門賞馬ソットサスという世界的良血馬で早くから海外遠征を視野に入れてきた馬。
「愛チャンピオンS→凱旋門賞」というローテは欧州でも多くの凱旋門賞馬を輩出してきた王道ローテ。この馬自身去年はこのローテで「愛チャンピオンS(3着)→凱旋門賞(12着)」という成績。
その24年愛チャンピオンS3着は馬群の中で終始レースを進め、直線は抜け出してくるまで我慢の競馬を強いられながらも最後鋭く伸びたようにレース適性自体は十分感じられた。
前走ドバイシーマクラシック7着は「サウジアラビア→ドバイ」の連戦でデキ落ちや疲れを感じさせる内容。立て直してのここは改めて期待できそう。
ドラクロワ・・・オンブズマン不在で断然の優勝候補


牡3 10戦5勝【5-4-0-1】
A.オブライエン厩舎 -騎手
主な戦績
25年:エクリプスS(G1)1着
25年:愛ダービートライアルS(G3)1着
25年:バリーサックスS(G3)1着
25年:英インターナショナルS(G1)2着など
ドラクロワは父が欧州の名種牡馬ドバウィ、母テピンはBCマイルやクイーンアンSを勝った名牝という超良血馬。
初の古馬との対戦となった7月のエクリプスS(G1)でその素質が一気に開花。古馬大将格のオンブズマンを後方からあっという間に差し切り一気に欧州中距離カテゴリのトップクラスへと上り詰めた。
オンブズマンとの2度目の対戦となった前走英インターナショナル(G1)ではペースメーカーを用意したオンブズマン陣営に上手くレースをコントロールされ2着とリベンジされた。
なお、ライバルのオンブズマンは、5月から毎月のように出走していたこともあってかここは回避。当然ここは優勝候補筆頭となる。
アンマート・・・馬券圏外は1回のみの欧州中距離界の堅実派


セ7 17戦9勝【9-6-1-1】
O.バローズ厩舎 J.クローリー騎手
主な戦績
24年:英チャンピオンS(G1)1着
23年:イスパーン賞(G1)1着
25年:プリンスオブウェールズS(G1)2着
25年:タタソールズゴールドカップ(G1)2着など
7歳ながら未だに一線級で活躍し続けているのがアンマート。通算17戦9勝【9-6-1-1】と馬券圏外になったのは24年ドラール賞の5着のみという堅実派。
23年にはイスパーン賞(G1)を、24年には英チャンピオンS(G1)をそれぞれ優勝するなどここに入っても全く遜色のないレベル。
レパーズタウン自体は初めてになるが、これまでコースや良馬場・重馬場を問わない活躍を見せてきただけに心配無用。
まとめ
今回は愛チャンピオンSが開催されるレパーズタウン競馬場のコースの特徴や傾向について紹介しました。
2024年に続いてシンエンペラーが2年連続の愛チャンピオンSの参戦予定と、近年あまり見られなかった欧州中距離G1がレースの選択肢の1つとしてとられるようになってきました。
1つのレースに日本の強豪が集結するのももちろん面白いのですが、世界を視野に入れて活躍の場を模索していく今の流れも非常にいいことだと思います。
特に今回の「愛チャンピオンS」→「凱旋門賞」のローテが日本馬にとっても有効なのか大きな注目ポイントになりそうです。



最後まで読んで頂きありがとうございました!
2025年愛チャンピオンSは日本時間の9/13<土> 25時30分です。
今からワクワクしますね。