英インターナショナルステークスはイギリスのみならず欧州中距離カテゴリの最高峰とも言えるレースです。
8月という時期もあって日本馬の参戦はまだそこまで多くありませんが、2005年にはゼンノロブロイが僅差の2着になるなど活躍を見せているレースでもあります。
今年は菊花賞馬ドゥレッツァが参戦予定で、日本での馬券の発売も決まり、非常に注目度の高いレースになります。
ここでは英インターナショナルSが行われるヨーク競馬場のコースの特徴や傾向を中心に詳しく解説していきます。
英インターナショナルSは芝中距離の世界最高峰レースの1つ
レース名 | 英インターナショナルステークス (正式名称:Juddmonte International Stakes) |
格付け | G1 |
距離 | 芝2050m(10ハロン56ヤード) |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 定量 ・3歳牡・セ(124ポンド(≒56.24kg)) ・4歳牡・セ(132ポンド(≒59.87kg)) ・牝馬は1.4ポンド(≒1.4kg)減量 |
開催日 | 8月下旬(2024年は8/21(水)23時35分発走予定) |
賞金総額 | 125万ポンド |
英インターナショナルSは1972年に「ベンソン&ヘッジズゴールドカップ」として設立され、イギリスのヨーク競馬場で行われる「イボアフェスティバル」の目玉といえるレースです。
イボアフェスティバルは、ヨーク競馬場で毎年8月下旬に開催される競馬の祭典です。4日間にわたって行われ、期間中にはG1競走3鞍を含む数多くの重賞競走が施行されます。
歴代勝ち馬もそうそうたる顔ぶれで、IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表しているレースランキングでもトップ10に入っており、イギリスのみならず芝中距離の世界最高峰のレースの1つとなっています。
イボアフェスティバルで行われる主な競走
レース | 年齢 | 距離 |
英インターナショナルS(G1) | 3歳以上 | 2050m |
ヨークシャーオークス(G1) | 3歳以上牝 | 2400m |
ナンソープS(G1) | 2歳以上 | 1000m |
ジムクラックS(G2) | 2歳牡・セ | 1200m |
グレートヴォルティジュールS(G2) | 3歳牡・セ | 2400m |
ロンズデールC(G2) | 3歳以上 | 3270m |
ロウザーS(G2) | 2歳牝 | 1200m |
エーコムS(G3) | 2歳 | 1400m |
イボアハンデキャップ | 4歳以上 | 2800m |
イボアハンデキャップは重賞ではありませんが、伝統と賞金額の高さからヨーロッパの平地競走で最も価値のあるハンデキャップ競走と言われ、非常に注目度の高いレースです。
過去10年の勝ち馬
以下は英インターナショナルS過去10年の勝ち馬です。
年 | 調教国 | 勝ち馬 | 性齢 | タイム |
2014 | アイルランド | オーストラリア | 牡3 | 2:07.35 |
2015 | イギリス | アラビアンクイーン | 牝3 | 2:06.58 |
2016 | イギリス | ポストポンド | 牡5 | 2:06.58 |
2017 | イギリス | ユリシーズ | 牡4 | 2:12.11 |
2018 | イギリス | ロアリングライオン | 牡3 | 2:07.70 |
2019 | アイルランド | ジャパン | 牡3 | 2:07.77 |
2020 | イギリス | ガイヤース | 牡5 | 2:07.38 |
2021 | イギリス | ミシュリフ | 牡4 | 2:05.92 |
2022 | イギリス | バーイード | 牡4 | 2:09.30 |
2023 | イギリス | モスターダフ | 牡5 | 2:06.40 |
更に過去に遡ると、14戦14勝の生涯成績を残したフランケル(2012)やイギリスクラシック2冠と凱旋門賞を制したシーザスターズ(2009)といった、名馬の中でも傑出した馬の名前も確認することができます。
日本馬の成績
年 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 着順 | 1着馬 |
2005 | ゼンノロブロイ | 牡5 | 武豊 | 2着 | エレクトロキューショニスト |
2019 | シュヴァルグラン | 牡7 | O.マーフィー | 8着 | ジャパン |
8月という時期もあってか日本馬の参戦は2頭とまだまだ少な目。
それでも2005年のゼンノロブロイはクビ差の2着があるように十分可能性のあるレースになっています。
ヨーク競馬場の特徴
1周距離は約3200mの広大なコース!「イギリスで最高の競馬場」との呼び声も
ヨーク競馬場は左回りのコースで、3つの引込線が特徴的な競馬場です。1周距離は約3200mもあり、幅も広く広大です。東京競馬場の芝1周距離が2083.1mという事を考えれば、そのスケールの大きさが分かります。
競馬発祥国であるイギリスは自然の地形を活かした競馬場が多く、歪(いびつ)なコースが多くなっています。特に連続する急カーブや最大40mの高低差のある「エプソム競馬場」はその傾向が顕著です。
日本の整った楕円型のコースに馴染みがあると、ヨーク競馬場も少し歪(いびつ)に見えるかもしれませんが、実際はかなり走りやすいコースになっています。
その理由としては、イギリスの競馬場としては珍しく起伏の少ない平坦コースという事が挙げられます。1周距離も長く、長距離でもコーナーを回る回数は少ないため、枠順による有利不利も少なく公平で実力の発揮しやすい造りになっています。
同じイギリスのアスコット競馬場がかなり特殊なこともあり、ヨーク競馬場は「イギリスで最高の競馬場」との呼び声もあるほどです。
900mにも及ぶ最後の直線の攻防が最大の見どころ
英インターナショナルステークスが行われる2050mのスタートは向正面から。
スタートしてすぐコーナーを迎えますが非常に緩いため、立ち回りに大きな影響は及ぼすことはあまりありません。
その後は平坦な550m程の直線を経て最後となる2つ目のコーナーを回ります。こちらは最初のコーナーとは違い大き目になっています。
最後の直線は900mにも及び、各馬進路を取りながら残り800mあたりから徐々に仕掛け始めます。馬場状態によっては外に進路をとることも珍しくありません。
平坦なコースとは言え、欧州のタフな馬場での長い直線はパワーやスピードの持続力など総合力を問われる舞台となります。
東京競馬場との比較
ヨーク競馬場は東京競馬場に似たコースと言われることもあります。
馬場の特性やスケールの違いがあるので難しいですが、「左回り」、「大きくゆったりしたコース」、「実力が発揮しやすい王道コース」など確かに共通点はいくつか見つける事ができます。
東京競馬場 | ヨーク競馬場 | |
1周距離 | 2083.1m | 約3200m |
直線距離 | 525.9m | 約900m |
日本馬が英インターナショナルSに出走するなら東京実績を、海外馬がジャパンCに出走するならヨーク実績をチェックしてみても面白いかも。
2024年英インターナショナルステークスの主な出走予定馬
ここでは2024年に英インターナショナルステークスに出走予定の有力馬を紹介します。
シティオブトロイ
牡3 6戦5勝
A.オブライエン厩舎 R.ムーア騎手
主な戦績:24年英ダービー(G1)1着 24年エクリプスステークス(G1)1着 23年デューハーストステークス(G1)1着
シティオブトロイはこれまでに英ダービーを含むG1、3勝を挙げている3歳馬。7月現在ロンジンワールドベストレースホースランキングで2位タイ(レーティング123)の評価を得ている今回の大将格。
2023年にはカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選出されており、名門A.オブライエン厩舎の中においてもエース的な存在です。
もっとも特徴的なのは父がアメリカ3冠馬であるジャスティファイの産駒であること。そのため秋の最大目標にBCクラシックを掲げ、ダートへの進出も目論んでいる。
6戦5勝とほぼ完璧な成績ではあるが英2000ギニーは9着と大敗しており、全くつけ入る隙がないわけではない。
ドゥレッツァ
牡4 8戦5勝
尾関知人厩舎 C.ルメール騎手
主な戦績:23年菊花賞(G1)1着 24年金鯱賞(G2)2着
24年の英インターナショナルステークスには7月現在でドゥレッツァのみ参戦予定となっています。
天皇賞春は熱中症の影響で人気を裏切る形になったが、前年菊花賞で見せたポテンシャルの高さはこの大舞台でも通用しても全くおかしくない。
また春は菊花賞での疲れが抜けきれず、使い出しが遅れ順調さを欠いたが、ここにきて元気そのもの。秋に向けてしっかり間隔が取れるローテを選んだこともあるが、この選択は今の状態の良さから出たともいえる。
一方で欧州の芝適正や折り合い面での不安、初の61キロという斤量などクリアしなければいけない課題も多い。
ただ、尾関知人調教師は過去に管理するグローリーヴェイズで19年21年の香港ヴァーズを勝利。スルーセブンシーズで23年凱旋門賞で大健闘の4着など海外実績も十分。日本馬初の英インターナショナルS制覇の偉業の期待が高まる。
アンビエンテフレンドリー
牡3 6戦2勝
J.ファンショー厩舎 R.ハヴリン騎手
主な戦績:24年英ダービー(G1)2着 24年愛ダービー(G1)3着
G1勝ちこそないが、英ダービーではシティオブトロイの2着、愛ダービーでは1番人気を背負いロスアンゼルスの3着と強敵相手に後一歩のところまで来ている。
愛ダービーでは最後の叩き合いで力尽きたこともあり、平坦コースで距離短縮がプラスに働くとみて英インターナショナルに目標を定めてきた。
ブルーストッキング
牝4 10戦3勝
R.ベケット厩舎 R.ライアン騎手
主な戦績:24年プリティポリーS(G1)1着 24年キングジョージQE(G1)2着 23年愛オークス(G1)2着
ブルーストッキングは翌日に行われるヨークシャーオークスとの両睨みだったがこちらに参戦。
3歳時には愛オークス2着など善戦も多い反面、勝ち切れないのがネックだったが、4歳になった今年は一味違う。
5月には今回と同じヨーク競馬場芝2050mのミドルトンフィリーズステークス(G2)で6馬身差の圧勝を収めると、続く6月プリティポリーSで初のG1制覇を成し遂げる。
更に7月キングジョージQE(G1)はハイレベルのメンバーにもかかわらず2着とここにきて一気に有力馬の1頭に。
コース経験や最近の上昇度を考えると非常に怖い1頭。
アルフレイラ
牡5 16戦7勝
O.バロウズ厩舎 J.クローリー騎手
主な戦績:24年ヨークステークス(G2)1着 23年ヨークステークス(G2)1着
アルフレイラはヨーク競馬場で4戦3勝二着1回と、このコースで抜群の相性を誇る1頭。前哨戦のヨークS(G2)を勝利しての参戦。
23愛チャンピオンS(G1)5着と24プリンスオブウェールズS(G1)4着とG1にはまだ手が届いていないが、得意条件で念願の初G1制覇を狙う。
陣営は状態面でも非常に自信を持っており、シティオブトロイへのリベンジが期待される。
カランダガン
セ3 6戦4勝
F.グラファール厩舎 S.パスキエ騎手
主な戦績:24年キングエドワード7世S(G2)1着 24年オカール賞(G3)1着 24年ノアイユ賞(G3)1着
ヨーロッパでも屈指の大馬主であるアガ・カーン殿下の所有馬カランダカランは目下3連勝中。
通算成績は【4-1-1-0】と安定しており、直近のキングエドワード7世S(G2)でのレースは6馬身差の圧勝とハイパフォーマンスだったことからも成長力が伺える。
ここはレースレベルは一気に上がるため大きな挑戦になるが、陣営の期待も大きく軽視は禁物。
古馬牡馬が61キロで走るのに対して3歳牡馬・セン馬は57.5キロと斤量面での恩恵も大きい。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
2024年英インターナショナルSは8月21日(水)の23時35分発走予定!
今から楽しみですね